野性動物の保護に情熱を傾けるオークランド動物園。
動物園やそのスタッフが一丸となって取り組んでいる、ニュージーランド固有の野生動物保護の実態を取材した。

文:Naomi Arnold.

ニュージーランドに生息する稀少種のカエル、アーチーズ・フロッグ(Leiopelma archeyi)を発見するのは非常に難しい。色は茶色と緑、謎めいた存在で夜行性、そのサイズは人の親指くらいしかない。この国に生息する多くの野生動物同様、アーチーズ・フロッグは進化に逆らうかのように原始的な姿を保っている。「生きた化石」と呼ばれるこのカエルは、約1億5000万年前の化石として発見された祖先とほぼ変わらぬ姿形で生息しているのだ。カエルでありながら跳躍力に乏しく、鳴き声も出さない。カエル特有の縦長のスリット状の瞳孔ではなく、丸い瞳孔を持ち、オタマジャクシは小さなカエルに変態するまでの間、卵に留まり、変態後に父カエルの背中によじ登る。

森林に生息し、サイズはわずか2-3cmほどのアーチーズ・フロッグは大方の時間を住処とする1平方メートルの面積内で過ごす。オークランド動物園の外温動物・鳥類担当キュレーター、リチャード・ギブソンは「仲間を求めて1平方メートルしかないエリアから出る場合もありますが、ほとんどの場合、同じエリアに戻ってきます」と語る。

園内でアーチーズ・フロッグの繁殖を手掛けているオークランド動物園は、ニュージーランド自然保護局(Department of Conservation、略称DOC)と協力して、定期的に野生に生息するカエルの生態調査や生息数調査を実施している。夜行性のカエルを探すには、多くの時間と忍耐が必要とされる。ウェオリノ・フォレスト(Whareorino Forest)に入り、懐中電灯を手に地面に這いつくばって、カエルを押しつぶさないように細心の注意を払いながら枯葉の山を一つずつ丹念に確認するからだ。

カエルには回帰性と呼ばれる習性があるため、動物園のスタッフは毎年、丸太や石、倒れた木の穴など同じ場所で同じカエルを発見することができる。アーチーズ・フロッグは非常に長生きで、北島中央部にある保護された森林での寒さや霧の中、40年も同じ場所に生息するという。

カモフラージュを得意とするアーチーズ・フロッグだが、ラットやハリネズミなどの外来種の捕食動物によってその数は大幅に減り、現在は絶滅の危機に瀕している。オークランド動物園は世界で唯一、アーチーズ・フロッグの繁殖を行っている。飼育下繁殖は、絶滅のリスクに対する保険となるからだ。アーチーズ・フロッグ以外にも、オークランド動物園は政府機関のDOCやコミュニティ団体、大学、他の動物園や水族館などと連携して、多くの絶滅危惧種の保護活動に取り組んでいる。

オークランドのような優れた動物園にとって、保全教育や調査、自然へのリリースを前提とした繁殖プログラム、そして野生動物の保護は、主要な仕事となる。動物園が動物やその生息地を保護する上で果たす役割の重要性は、年々世界規模で高まっている。野生動物が生き延びるためには、動物の生息数管理の専門家である動物園スタッフのスキルや経験は必要不可欠だ。事実、オークランド動物園の自然環境保全への取組みは、過去7年間で飛躍的に拡大した。スタッフは毎年、主にニュージーランドの自然環境における30以上のプロジェクトに対し、最大1万時間というとてつもない時間を費やしている。

オークランド動物園のスタッフの熱意と努力により、2000年にはオークランド動物園自然保護基金が設立、同基金はニュージーランド国内外で行われている野生動物保護プロジェクトに資金援助を行っている。今までに400万ニュージーランドドルを超える資金が調達され、全世界の保全プロジェクトに交付された。ニュージーランドの絶滅危惧種で早急な介入、管理が求められているのはカカポ(フクロウオウム)、タカヘ(ツル目クイナ科に分類される鳥類の一種)、ニュージーランドアシカ、ウェタパンガ(昆虫)、そしてコブル・スキンクとチェスターフィールド・スキンクと呼ばれるトカゲ2種。オークランド動物園はこれらの生き物を絶滅から守るために、動物園をあげて力を注いでいる。

現在、世界で確認されているタカヘの数は300羽。成鳥のカカポの生息数は、わずか147羽となっている。今年のカカポの繁殖シーズンは例年になく早い時期から始まり、最も長い期間が観測されている。 孵化したヒナの数は60羽以上だ。オークランド動物園の獣医と鳥類専門家、計15名はコッドフィッシュ島やアンカー島、さらにはニュージーランド南島のインバーカーギルにある施設に出向き、DOCのカカポ・リカバリーチームと共に巣の観測、ヒナの移動や人の手で養育したヒナを野生の親鳥に戻す活動に従事している。

オークランド動物園の園長、ケビン・ブーリーは次のように語る。
「現在、優れた動物園が人と野生動物、両方に対して果たす役割の重要性や関連性が非常に高まっています。近代化と共に時間に追われる生活が主流となっている現代では、自然界と接する機会は減りつつあります。我々は人々を集め、野生動物との貴重な体験を提供することで、自然界とのつながりを育んでいくことができると考えています。オークランド動物園で働くスタッフの野生動物保全科学の知識やスキルも、動物園で飼育されている動物の世話と自然界に生息する野生動物の保護、両方に対して過去に例を見ないほど重要視されてきています」

絶滅が危惧されるニュージーランド固有の野生動物

非政府機関で構成される国際的な自然保護ネットワーク、IUCN(International Union for Conservation of Nature、国際自然保護連合)が作成した「レッドリスト」(絶滅の危機に瀕している野生動物のリスト)に掲載されているニュージーランドの絶滅危惧種を紹介する。

重要な保全活動は、動物園内でも行われている。キウィ、カカ(オウム)、チャイロコガモ、アオヤマガモ、頭部のオレンジ色が特徴的なインコのカカリキ、コブル・スキンク、チェスターフィールド・スキンクやウェタパンガはここで繁殖され、自然界へと戻される。その他のプロジェクトでは、ニュージーランドの最もへんぴな場所へと足を運んでいる。例えば、アシカの赤ちゃんに管理用のタグを付ける作業では、スチュアート島の南端に近いポート・ペガサスにまで赴く。一方、西に出向いての作業もある。捕食動物が生息しないコッドフィッシュ島は、カカポの生息が確認されている3つの島のうちの一つで、オークランド動物園のスタッフが定期的に訪れ、観測や調査を行っている。

マツダはオークランド動物園に対し、動物園の名前が塗装された3台の車両を提供している。モデルはマツダCX-5、Mazda6(日本での販売名:アテンザ)ワゴン、そしてBT-50だ。キュレーターのリチャード・ギブソンはクルマが提供されたことで動物園での活動の効率性が大きく改善された、とマツダへの感謝の言葉を口にする。
「突然連絡が入って現場に駆け付けなければならない時があるのですが、マツダ車には本当に助けられています。もう、マツダ車のない動物園での生活は考えられません」

ギブソンの言う活動には、森の中のワインディングやブッシュを通る道など、約300キロもの距離を走破してウェオリノ・フォレストに到着し、1億5000年前の姿を保っているニュージーランド最小の両生類、アーチーズ・フロッグを保護する活動も含まれている。